遺言書・遺産相続のQ&A集
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2,どんな人が遺言をした方がいいのですか? (遺言に関するQ&A:その2)


基本解説


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Q&A


Q1 遺言で法定相続分と異なる配分をしたいのですが?


A 遺言書に法定相続分と異なる配分を記載することが必要です。

もし、遺言書が書かれていなければ、法定相続人による話し合い(遺産分割協議)で、遺産の配分が決められることになります。この場合、法定相続人全員の合意があればどのような配分の仕方であってもかまわないのですが、現実的には話し合いの前提として、法定相続分が一応の基準とされるでしょう。

さらに、遺産分割協議で法定相続人全員の合意が得られなければ、家庭裁判所での調停・審判手続きに入ることになるでしょう。その場合、家庭裁判所では法定相続分が基準として利用されることになります。

このように、遺言書がない場合の相続においては法定相続分が一定の基準になります。

これに対して、遺言者が遺言書を書くことによって遺産の配分方法を自分で決めておこう…というときには、それを法定相続分と異なるものとすることも可能です。法定相続分によって遺言内容が拘束されるということはありません。

ただし、法定相続人の遺留分を侵害する内容の配分方法を遺言書で定めた場合には、その遺留分権者が自己の遺留分を主張(遺留分減殺請求)すると、その限りで(遺留分を侵害している限度で)遺言書の効力が否定されることになります。

したがって、遺言で法定相続分と異なる配分をするときには、法定相続人の遺留分を侵害しないような内容にするなど、遺留分への配慮をすることが重要となります。


Q2 法定相続分どおりの相続でよいのですが?


A 具体的にどの財産を誰に帰属させるか(遺産分割方法)を遺言で指定することも重要です。

法定相続分どおりの相続でよいのなら、あえて遺言書を書く必要が無いと思われるかもしれません。しかし、法定相続分どおりでよいとしても、法定相続人間で争いが生じる可能性はあります。

例えば法定相続人(三人の子供)がそれぞれ三分の一ずつの法定相続分を有するという場合で、遺産が自宅不動産・農地・預貯金・現金・自動車・農業機械・骨董品etc…とういうとき、誰が自宅不動産を取得するのか、誰が農地を取得するのか、誰が骨董品を取得するのか…ということについては何ら決まっていません。もし、遺言書でこれらについて決めていなければ、三人の法定相続人間で争いが生じる可能性があります。

相続には、誰がどれだけの割合を取得するかという相続分の問題と、具体的にどの財産を誰が取得するのかという遺産分割方法の問題の二つがあります。後者を遺言書で指定すること(遺産分割方法の指定)は、相続分よりも重要だといえるでしょう。

Q3 子供がいないので妻に全財産を残してあげたいのですが?


A 親や兄弟姉妹がいる場合には、遺言書を書いておく必要があります。

法定相続人は大きく二つに分けることができます。ひとつは配偶者、もうひとつは血族相続人です。配偶者とは夫や妻のことであり、血族相続人とは子・直系尊属(両親など)・兄弟姉妹のことを指します。

このうち、配偶者は必ず法定相続人となります。これに対して、血族相続人は、まず子が法定相続人となります。子がいない場合に直系尊属が、子も直系尊属もいない場合に兄弟姉妹がそれぞれ法定相続人となります。

つまり、被相続人に子供がいないだけでなく、直系尊属(両親など)や兄弟姉妹もいなければ、その遺産は全て配偶者が当然に相続することになります。これに対して、直系尊属または兄弟姉妹が存在する場合には、配偶者は当然には全ての遺産を相続することができないことになります。(直系尊属または兄弟姉妹との共同相続となります)

したがって、妻(配偶者)に全財産を残したい場合には、その旨を記載した遺言書を書いておく必要があります。

ただし、このような遺言書を書いたとしても、直系尊属(両親など)には遺留分(法律が認めた最低限の取り分)があるので、もし直系尊属がその遺留分を主張(遺留分減殺請求)すれば、その限度で遺言の効力が否定されます。遺言書といえど遺留分の主張には勝てないのです。(遺留分が主張されなければ何の問題も生じません)

これに対して、兄弟姉妹には遺留分が認められていないので、このような心配はありません。


Q4 相続人ではない知人に財産を譲りたいのですが?


A 遺贈する旨を遺言に記載することによって可能です。

相続人(法定相続人)ではない人は、遺産を相続することができません。しかし、このような人に対しても遺贈をすることにより、自分の死後に財産を譲ることは可能です。

遺贈とは、遺言によって遺産の全部又は一部を無償で、又は負担を付して、他に譲与することです。

つまり、遺贈をするにはそれを遺言書に記載する必要があるのです。

また、法定相続人がいるにもかかわらず、法定相続人以外の人に財産を遺贈する場合には、何かと揉め事になる可能性が大きいので、遺言執行者も指定したほうがよいかもしれません。

なお、遺贈された者(受遺者)は、遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄することができます。


Q5 愛人との間の子にも他の子と同じだけ財産を与えたいのですが?


A 他の子と同じだけの財産を相続させる旨の遺言を書くことが必要です。

愛人との間の子も、認知をすれば法律上の子となります。法律上の子となる以上、当然、法定相続人にもなります。ちなみに、婚姻関係にある父母間に生まれたこを嫡出子というのに対して、この認知された愛人との間の子は非嫡出子といいます。

ただし、法定相続人の中に嫡出子と非嫡出子がいる場合、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の半分とされています。したがって、非嫡出子に他の子(嫡出子)と同じだけ財産を与えたい場合には、その旨の遺言書を書く必要があるのです。

なお、愛人との間の子を認知しなければ、法律上の子とはならないので、法定相続人にもなりません。その上で、この子に財産を与えたいのなら、その子に財産を遺贈する旨の遺言書を書くことになります。


Q6 暴力を振るう長男には財産を一銭もやりたくないのですが?


A 家庭裁判所に廃除の請求をして、これが認められれば一切の財産を相続させないことが可能です。

 長男に財産を相続させない方法としてまず考えられるのが、長男は一切の財産を相続させないという内容の遺言を書くことです。

しかし、長男(被相続人の子)には、法が認めた最低限の取り分である「遺留分」があります。したがって、長男がその遺留分を主張すると、その限りで遺言の効力は否定され、長男は遺留分相当額の財産について相続することになります。

つまり、遺言と言えど、遺留分の主張には勝てないのです。

そこで、遺留分を有する法定相続人であっても、一切の財産を相続させないためには、「廃除」する必要があります。

被相続人が家庭裁判所に廃除を請求し、家庭裁判所がそれを認めると、その法定相続人は、法定相続人たる資格を剥奪されます。遺留分とは、一定の法定相続人に認められた最低限の取り分なので、法定相続人たる資格を剥奪されれば、遺留分もまた認められなくなるのです。

このように、廃除とは法律が認めた最低限の取り分である遺留分すら否定してしまうという大きな効力を持つものです。したがって、被相続人が単に「相続させたくない」と思ったからといって、家庭裁判所は簡単にそれを認めるわけにはいきません。

法律では、「被相続人を虐待し、もしくは重大な侮辱を加えたとき」または「著しい非行があったこと」が要件とされています。そして、これらがあったかどうかは家庭裁判所が判断します。ただ、家庭裁判所はこれらの認定には厳格で、そう簡単に認められるものではないというのが現実です。

なお、この廃除の家庭裁判所への請求は、被相続人が遺言で行うほか、生前に行うことももちろん可能です。


Q7 妻の介護をしてくれた長男の嫁に財産を残してあげたいのですが?


A 遺言で遺贈をする必要があります。

長男は法定相続人ですが、長男の嫁は法定相続人ではありません。法定相続人ではない以上、相続させることはできません。

そこで、「実質上」長男の嫁に財産を残す方法として、遺言で長男にその分多くの財産を相続させるという方法が考えられます。しかし、この方法では、形式的にはあくまでも法定相続人である長男に財産を残すことになり、長男の嫁に直接財産を残すことにはなりません。

形式的にも長男の嫁に直接財産を残したいのであれば、遺言で長男の嫁に「遺贈」する必要があります。

ただし、その遺贈が他の法定相続人の遺留分を侵害するものであった場合、その遺留分の主張がなされれば、その限りで遺贈の効力が否定される可能性があることに注意が必要です。


Q8 介護をしてくれる愛人に財産を残してあげたいのですが?


A 遺言で遺贈をする必要があります。

愛人は、よく介護をしてくれるなど通常の夫婦以上の関係にあったとしても、法律上は配偶者ではないので、法定相続人とはなりません。

そこで、愛人に財産を残すためには、遺言で「遺贈」をする必要があります。

法定相続人の遺留分に注意が必要なのは、Q7の場合と同じです。


Q9 農業を長男に継がせたいのですが?


A 農地等の「生前贈与」または「遺言による相続」が考えられますが、いずれの場合にも他の相続人の遺留分への配慮が重要です。

特定の法定相続人に農業を継がせたい場合、その農業を継ぐ後継者に農地等の財産を承継させる必要があります。

その方法としては、「生前贈与による方法」または「遺言により相続させる方法」が考えられます。

 しかし、どちらの方法でも、その他の法定相続人の遺留分を侵害する場合には、相続時に、その遺留分の主張(遺留分減殺請求)がなされる可能性があります。こうなるとまず間違いなく、遺産争い・相続争いとなります。

事前の遺留分の放棄も可能ですが、これは被相続人(遺言者)が思いのままに行うことができるものではありません。事前の遺留分の放棄のためには、遺留分権者(相続人)が自ら家庭裁判所に申立てなければなりません。また、家庭裁判所がその放棄を許可することが必要であるところ、家庭裁判所は後見的な立場から判断するので、いくら遺留分権者本人が遺留分の放棄を申立てたとしても、必ずしもその許可が下りるとは限りません。つまり、事前の遺留分の放棄はあまり現実的ではないということになります。

この遺留分をめぐる争い・トラブルをできるだけ回避するために重要なことは、遺留分権者である他の法定相続人に対し、たとえわずかでも農地以外の資産を残し、遺留分を侵害される相続人の気持ちを和らげる努力をすることです。

 もちろん、そのような努力をしたからといって、遺留分を侵害していることには変わりはない以上、必ずトラブルが回避できるとは限りません。

しかし、農地は農業後継者が受け継がないと意味がない財産です。農地法上、農地は農業に従事する者が所有するのが原則ですし、農地を譲渡するような場合にも知事の許可が必要であるなど、その処分には大きな制限が付されているからです。つまり、農業を承継しない相続人が農地を取得してもあまり意味がないのです。

従って、たとえわずかでも農地以外の資産を残し、遺留分を侵害される相続人の気持ちを和らげる努力をすれば、多くの場合、遺留分減殺請求にまつわるトラブルを回避できると思われます。

また、都会の方にとっては時代錯誤のように思えるかもしれませんが、農業を承継する・農地を受け継ぐということの実質的な意味として、先祖代々の田畑を守る・本家を守る・墓を守るなどの副次的な意味(義務)も並存することが多いと思われます。従って、日頃から、相続人をまじえ、自分の死後の財産処分について話し合っておくことが、農業承継にあたっては特に重要だと思います。


Q10 会社を長男に継がせたいのですが?


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Q11 多額の借金があるので相続放棄をしてもらいたいのですが?


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Q12 残される老妻の面倒をみてもらいたいのですが?


〜随時製作中〜








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